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与えられた環境の中で、どれだけ自分の選択肢を広げられるか

森 幹高
株式会社デンソー 
エアコンディショニング企画部 担当係長

経歴

2008年、株式会社デンソーに新卒入社。人事部へ配属され4年間、工場にて労働時間・勤務制度等の労務管理を経験。その後、本社の人事部へ異動し、コア人事制度の企画・運営、資格制度等を4年間務める。上海のデンソー中国地域の総括拠点にて2年間人事全体の業務に携わり、帰任後は現在まで2年間エアコン部署に所属する。

事業内容

株式会社デンソーは、先進的な自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカーです。
「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい。」このスローガンを達成するために、デンソーは「電動化」「先進安全/自動運転」「コネクティッド」に注力し、新しいモビリティの価値を提供するとともに、「非車載事業」として、FA(ファクトリー・オートメーション)や農業の工業化に取り組み、社会・産業界の生産性向上に貢献します。
(引用:株式会社デンソーHP、会社案内パンフレット)

ギャップに悩んだ新卒時代、自分の仕事に誇りを持てた3年目

―元々、自動車が好きだとの思いでデンソーに入社した森さん。リクルーター制度による大学の先輩からの紹介で入社する先輩は皆、営業職だった為、自分も営業職だろうと想定していましたが、実際は人事部への配属でした。入社前後で感じたギャップと転機を伺いました。

森:学生時代にイメージしていたのは営業や購買、生産管理などでしたが人事に配属されたのでギャップは大きくありました。自動車業界なのに自動車業界に携わった仕事ではないとモヤモヤした気持ちが正直ありましたが、自分の仕事に自信を持ち始めたのは3年目の東日本大震災がきっかけでした。

当時、再建不能になった他社工場の立て直しの為に、トヨタや本田、デンソーなど各社が協力して設備メンテナンスの人員を送り込みました。名立たる企業の中で「デンソーの人達がいなかったらここまでのスピードで出来なかった。」と言われるほど、設備のプロであるデンソーの技能者の皆さんは高いプレゼンスの仕事をこなしていました。

そんな彼らが緊急時とは言え、勤務時間内に終業できず、24時間稼働している状況を見て、この人達になんとか報いてあげたいと思ったんです。その時に「自分の会社の入った会社は自動車業界の中でも重要なポジションにいるんだ」「自分がこの人達を支えていくんだ」と初めて実感できたんですよね。私がやれた仕事は、彼らの困り事や必要な物をヒアリングして調整することや、彼らがどれだけ苦労して成果を出しているのか報告するなど大したことではなかったのです。しかし自分がほんの少しでも助けることが出来たことに誇りを持ち、そこからこの会社で頑張ろうと思うようになりました。あれが無ければもしかしたら違う道に行っていたかもしれません。以前は小分けされた仕事の中でやっている感じはありました。大企業であればどこでもそうだと思うのですが、ルーチンワークをひたすらこなすことから始まってしまうので

明確なキャリアイメージを持つことが希望の異動のチャンスになる

―その後、本社で人事制度を司る部署に異動。昇格プロセスの廃止をするプロジェクトを行いました。

森:1948年に創業したデンソーが1950年頃からずっと実施している昇格試験は時間をかけすぎており生産性が悪いと私自身、感じていました。上司のマネジメント力を向上させる為にも、上司が部下の日々の業務を見て評価すべきだと考えました。長年行われている試験制度の廃止にはハードルが高く、役員の反発を受けながらも、時代によって変化すべきであると必要性を訴えながら廃止を実現しました。ここで色々なことを考え抜いた経験は、人事としてのプロフェッショナリティを深めることになったと思います。

―大手企業の異動や転勤のタイミングには色々なパターンがあり、職種そのものが変わるパターンと言うのは会社によって異なるそうです。その中で希望通りの配属をされるにはどうしたら良いのでしょうか。

森:自分はどういう仕事がしたいかというキャリアイメージを持っていることが大事です。自分のキャリアについて上司としっかりコミュニケーションを取り、上司が上部に伝えていければ希望の異動のチャンスはあると思います。なかなか思い通りに配属はされない中で、会社からこの人の希望を叶えてあげたいと思ってもらえる人材は会社にとって大事な人材ということになるので。

私は海外で活躍してみたいと言う気持ちがあって希望を出して上海に赴任しましたが、これは会社が私を成長させたいと思ったから行かせてくれたんだと思っています。なので自分の考えを持って常に発信していくことが大事です。そうでないと逆に流されるばかりでずっと同じ場所に留まることになってしまうかもしれないですね。

上海では、生産会社が多数ある中でどの生産会社のどんな人事制度が良いのかを現地中国人スタッフと考えて、それぞれの拠点に合った人事制度を構築していきました。その中でも一番思い出深いのが、ソフトウェア会社を上海に一つ作ったことです。
中国での事業全てを司るソフトウェアの会社で人事制度を作ったことは非常に思い入れが強く、勉強にもなりましたし、海外でこんな仕事が出来るとは思っていませんでした。

大手入社後4年間、頑張れるのか諦めるのかで二極化する

―かつて決められた仕事にもどかしさを感じた部分がありながらも、変化や挑戦が求められる職務へと対応していった森さんですが、大手企業ならではの我慢強さが求められる場面を語ってくれました。

森:学生さんに伝えたいことでもあるのですが、大企業において最初の4年間はしんどいと思うんです。非常に狭い領域でシステマチックな仕事をし続けなければならないんです。頑張ればそこから先に拓けてくると思うのですが、拓ける前に辞めてしまう人も多いんですよね。
これはおそらくどちらにも責任があり、昭和のような時間軸で「最初の10年は見習いだ」といった発想でマネジメントしている人は世の中にいっぱいいると思うんです。その発想に違和感を覚えるところもありますが、一方でミレニアム世代などといわれる学生も、我慢強さのようなところが若干、私の世代と違う気がするんです。双方に良し悪しはあるものの、上手く組み合わせていければもっと良くなるのにとは思いますが。
多額のお金を動かす大企業ではポジションが上がるほど色々な仕事が出来るのは間違いないと思いますが、いきなりやりたいと思ってもやれないのは大手企業の特徴だと思います。私自身、3年目の経験が無ければ、転職していたか安定志向に行っていたかもしれないですね。

今の時代、大手企業と聞くと自由度が低かったり将来性に不安を持ったりするイメージがあると思います。少なからずそういう現場もあります。しかし将来的に世の中を大きく変える仕事をしたいと思っているのであれば、大手企業で培った組織力は確実な武器になると思います。歴史の中で積み重ねられたものを上手く使えるのは大企業の強みだと思うので。その後に何をするかは自分次第で、小さいところから大きくしていきたいと思うのであれば、ベンチャー企業で働くことや起業をしても良いと思います。

日々本質を掴もうとする考え方

―仕事をしていく中で大切にしていることを伺うと「人事の仕事の本質は何なのかということを常に考えていくこと」との答えでした。

森:その上で私が今考えている人事の本質は、自社の従業員一人ひとりの心を揺さぶることです。人事制度や評価、研修など色々な人事施策はありますが、全ては一人ひとりの従業員の心を動かす為というところに行きつくはずだと思うんです。その観点を外すとルール作りが目的になって行ってしまいます。人事制度を作る際に何の為にやって何が変わるのかという点が無いと、人事の独りよがりな業績作りの為だと言われてしまいます。
人事は従業員一人ひとりのモチベーションを上げて全体を活性化させ、業績やアウトプットに結びつけることが本来の役割だということを常に念頭に置いています。

―これは「何故を5回繰り返す」といった、日々本質を掴みにいこうというトヨタグループの文化が癖になって身に付いた思考であり、「色々考えていても上司からはまだ考えが足りない、浅いなどと言われる日々を繰り返していた結果かと思います。」と語ってくれました。

間違って良いから自信を持って自分の考えを言うこと

―就活で面接を受ける学生に心掛けてほしいことは「面接官に間違っていると思われても良いから、自信を持って自分の考えを言うこと」だと教えてくれました。

森:学生だから間違って良いんですよ。自分が面接官だったら、それが合っているか間違っているかは全然気にしていなくて、それよりも信念を持っているかと言うことや、想いの強さなどに惹かれるので。安易に周りに流されてしまうのはあまり良くないですし、一番良くないのは暗記したものをそのまま言っているなっていう学生ですね。準備している原稿を頭に入れてそれを話している場合は、本心を聞きたいので自然体で話せるようになってくるまですごい質問します。そこで何も出てこないと付け焼き刃だと思ってしまいます。なので間違っても良いから、どう思っているかを話してほしいです。

―最後に読者へのメッセージを頂きました。

森:自分が何をしたいのか、どうなっていきたいのかというのはしっかり考えてほしいです。加えて、キャリアは必ずしも自分の思い通りにはならないと思っていいです。その持ち場の中で、どれだけ自分の選択肢を広げる活動が出来るかが大事だと思います。
上から与えられるのをただ待っていても道は拓かれません。主体的にキャリアを描くことが大切で、その上で希望通りにならない時に腐らないことが大事だと思います。自分の可能性を広げることは与えられなくても自分で出来ますよね。そこで自分の選択肢を持った中であれば良いですが、そうではなく自分が思い通りにならないから辞めるといったように安易に自分で登り始めた階段を諦めてしまうのは良くないかなと思います。

―大手企業に入社し予想外の部署に配属され、当初はルーチンワークにもどかしさを抱えながらも辞めずに続け、自分の仕事に自信を持てた転機から挑戦と思考の深化を重ね、現在まで人事としてご活躍されている森さん。
読者の皆さんの中にも大手志向の方は多いと思いますが、是非、大手企業の特徴を理解した上で自分の軸を持つ大切さ、自ら道を切り拓く強さを持ってキャリアプランを立ててもらいたいと思います。

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